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いつもどこかで朝が…
明日までの長い時間
開発途上国と言われる国にいて、日々仕事と生活をしていると
当然ながらいろんなことを目にする。
先日は、オフィスの近くでかっぱらいをした人が逃げて行き、
周りにいた人が総出で追いかけるところを見てしまった。
その後どうなったかはなるべく知りたくない。
普段は、とても良い人たちだけど、悪いことをした人には情け容赦はない。
知り合いの家族や友達があっけなく亡くなった、という話もしょっちゅう耳にする。
サービスの値段はあがるのに、質は向上しないどころか下がっていたりもする。
結局のところ、いろいろなシステムがきちんと機能していないということなのだと思うけれど、
プロジェクトではそういうところまでタッチしない。
あくまで、プロジェクトサイトの女性のリプロダクティブ・ヘルスの向上、というところを目指していて、通常、「プロジェクト」というものは目標があったらそれに向かって全てが投入されるものであり、他のところにまでタッチしている余裕はほとんどない。目標を達成するだけでも、そうそう簡単なことではないから。
だから、仕事として、ある程度、線を引いている。
だけど、そうやって線を引いてみて、
もしかしたら「安全圏」で奮闘しているつもりになっている自分に、
フルスイングで平手打ちが飛んでくるような出来事にも遭遇する。

仕事場の一部なので、村の診療所にはしょっちゅう顔を出す。
仕事場の一部だから、慣れきってしまっているけど、
やっぱりここは、医療現場であって、
具合の悪い人がやってくる場所なのだ。
大雨の後、ほとんど患者が来ていない診療所で、二人の女性に連れられた小さな女の子が診察を受けるのを待っていた。
ナースに呼ばれて待合室に来た女の子は、一瞬何が起きているのか分からないくらい、体中、傷だらけだった。
頭にも、顔にも、腕にも背中にも足にも。
古い傷、新しい傷。
4歳の小さな女の子は、一緒に住んでいる祖母に虐待を受けていた。
背中に、たくさん、噛み痕が残っていた。
消えない古い傷。
母親は再婚して一緒に住んでいないらしい。近所の人たちが警察に通報して、保護されて、診療所に連れてこられたようだ。もう、お祖母ちゃんのところには帰りたくないと言うので、ナースは女の子の親戚を探して、保護してもらったとのこと。そして、とにかく毎日様子を見せに来るよう言って、今日も来たのだという。
心が凍るとはこういうことなのかと、初めて戦慄した。

私には何もできないし、今、可能な限りの、周りの出来ることはされている状況だったと思う。
虐待に対して、どうして良いかも分からない。分からないのに、余計なことをして、収拾がつかなくなる事態は避けなければならない立場でもある。
だけど、本当に何もできないのだろうか…
あの子の傷は、この先、癒えることがあるのだろうか…
と考えたら、ご飯を食べるのを忘れてしまった。

でも結局のところ、私は世界を救えない。
世界で起きている問題の全てに、対応することはできない。
私はリプロダクティブ・ヘルスのプロジェクトを実施しにきているサブ・マネージャーでその範疇から外れることに手を出して、本来の目的を疎かにすることはできない。
というのが大人の結論なのだとは思う。
どうにかこうにかこじつけでもして、プロジェクトも疎かにせず、目の前にある課題にも取り組んでいけたら理想なのかもしれないけれど、そんな力もない。
頭では分かっているけれど、
鮮烈な暴力の記憶に、震えてしまう。

どれだけの長い時間が過ぎれば、あの子は人の愛情を信じることができるようになるだろう。
その長い時間の中に、私は介在しないと思う。
あまりの無力さに愕然とするけれど、
でもあの子の傷、忘れないでいようと思う。
随分がんばって、長いこと耐えてきたであろうことも。
夜、眠る前、また傷つけられるなら明日なんか来なくていいと、もう思わなくてもいいように、
今はそれしかできないけど、
幸せな夢が見られるように、祈ろう。

あの子の名前は、アナという。
昨日も、今日も、明日も、
アナと他のたくさんの女の子たちが
一生懸命生きている日々が
いつか必ず光り輝きますように。
by joi-mako | 2014-09-10 21:32 | Comments(0)
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